冬の鹿寄せ

まだまだ余寒厳しい頃ですが、梅の花が一輪、一輪とほころびる様から、
春はもうそこまでと、明るい気持ちになります。

日も少しずつ長くなり、外に出てみようという気持ちになる頃ではないでしょうか。

そんな人々の心をとらえるかのように、
晩冬の奈良公園の風物詩「鹿寄せ」が、今年も始まりました。

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「鹿寄せ」は文字通り、奈良公園周辺の鹿を集めることなのですが、
明治25年、鹿苑竣工奉告祭で行われたのが始まりと言われる歴史ある催しです。

昔は狼や野犬がいたため、夜になると一ヶ所に鹿を集めて
安全を図るため行われていたこともあるそうです。

戦時下で一時中断しましたが、戦後復活し、
東京オリンピックや大阪万博といった大きなイベントの開催時に
合わせて行われることもありました。

現在の冬の鹿寄せは、奈良の鹿やその生態に親しんでいただくために、
市と観光協会が主催し、1980年に始まりました。

もともと冬に行われていた鹿寄せですが、より多くの方に楽しんでいただこうと
2013年からは夏にも行われています。

今回は2月9日(土)から3月13日(水)まで、月曜を除く毎日、朝10時から約15分間、
春日大社参道に近い飛火野(とびひの)という広々とした芝地で開催されています。
(※この時期以外にも、有料で開催することができます。)

鹿寄せを執り行う奈良の鹿愛護会の方がナチュラルホルンを吹くと、
その音色に誘われて、鹿たちが森の奥から列を組んで走ってきます。

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また使われるナチュラルホルンはピストンがなく、息の入れ方で音程が変わり、
オーケストラ等で使われている一般的なホルンとは種類が異なります。

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奏でるのが難しそうですですが、奈良の鹿愛護会の方によると、
比較的誰でも音を出すことはできるそうで、愛護会職員の多くの方も吹けるそうです。

そして旋律はベートーベンの交響曲第6番「田園」の中のワンフレーズ。

戦前にはラッパが使われていたそうですが、戦中の中断から戦後の鹿寄せ復活時に
牧歌的なイメージのあるナチュラルホルンがふさわしいのではないか、
という理由で変更されました。

この楽器と旋律を提案したのは当時の春日大社宮司さんだと言われています。

鹿たちは、係の方からどんぐりのふるまいをたっぷり受けた後、
集まった人々と触れ合い、三々五々森に帰っていきます。

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夏より厚い冬毛に包まれて、やや丸くなった鹿たちが集い
どんぐりを食べる姿は愛らしく、しばし寒さを忘れ、日々の喧騒は遠のきます。

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広大な奈良公園の自然にゆだねられたかのような、のどかで鷹揚な行事。
ここでしか見ることのできない珍しい光景です。


また、これからの時期は飛火野の西側に広がる片岡梅林も見ごろを迎えます。

紅梅や白梅の鮮やかに花開く様が、春の訪れを感じさせてくれます。
こちらの散策も、合せてお楽しみください。

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